病気解説

痔・肛門痛

人には聞けない肛門が痛くなる理由

肛門痛には、

  • ズキズキ、ジーン、チクチクといった痛み
  • 痛みが継続する場合
  • 突然痛みを感じてまた消失する場合
  • ズーンとした鈍痛
  • 神経痛の発作性のような痛み
  • いつも便が出たい感じ

などがあります。

痛みとして注意が必要なのは、直腸や肛門の癌などの悪性腫瘍がある時です。
痛みは日ごとに強くなり、昼夜とも続きます。
また、痔の原因となる痛みとして痔ろう(アナジ)、肛門周囲膿瘍、裂肛(キレジ)、痔核(イボジ)などがあります。
いずれも便秘や下痢、飲酒、力仕事、冷え、長時間の座位、妊婦などの場合に起こります。

痔以外では肛門部のヘルペス(ウイルス感染)皮脂腺の炎症(粉瘤)、汗腺の炎症(膿皮症)などがあります。まれに辛い物を多量に摂取した後の排便時に痛みを感じることがあります。

他にも痔の手術後に遷延性術後痛や痔の注射治療後の痛みは時々みられ、治療が困難な場合があります。
肛門以外の原因で肛門痛を感じるのは腰椎や仙骨の病気、前立腺の病気、婦人科的疾患、精神的ストレスなどがあり、このような種々の原因で肛門痛が続く場合があります。

まずは自己判断せずに、専門医のいる肛門科を受診し、原因を知った上での治療が必要です。

肛門痛の原因

肛門痛の原因として一番多いのは痔です。

痔とは肛門や肛門周辺に起こる病気のことで、代表的なものとして、痔核(いぼじ)、裂肛(きれじ)、痔ろう(あなじ)の3種類があり、痔核はさらに内痔核と外痔核に分かれます。

内痔核

痔核は、直腸の下や肛門にある静脈を含めて肛門を閉じる役割をするクッション部分がうっ血(血流の障害により静脈内の血液がたまった状態)して膨らんだもので、この痔核が歯状線より内側にできたものを内痔核と呼びます。

内痔核は痔の中で一番多く見られます。便秘やトイレ時間が長くて排便時のいきみが強い、長時間同じ姿勢をとる、妊娠や出産がきっかけで起こりやすくなります。
症状としては痛みはほとんどなく、排便時に出血したり、肛門から脱出したときに、肛門から飛び出してくる感じや異物感があります。
進行すると、脱出しても排便が終わると戻る状態から常に痔核が脱出し指で押さえなければ戻らなくなります。最終的には指で押さえても戻らなくなります。

外痔核

うっ血した状態が肛門の歯状線より外側にできたものをいいます。血まめが出来た状態で血栓性外痔核といいます。

原因は便秘や下痢、アルコールや辛い物の摂り過ぎ、長時間歩き回ることや座りっぱなしの事が多く、冷えやストレスも原因の1つと考えられます。
症状としては腫れて痛むことが多いですが、出血は少ないです。

裂肛

肛門の皮膚が切れたり、避けた状態です。
原因として、便秘などによって硬い便を無理に出そうとして、その衝撃で切れることが多いのですが、慢性的な下痢症状による炎症としても起こることもあります。便秘がちな女性に多く見られます。

症状として排便時に激しい痛みと出血があり、排便後もしばらくは痛みが続きます。
進行すると裂肛を繰り返すことで裂け目が深くなって炎症が起き、潰瘍やポリープが出来て肛門が狭くなる(肛門狭窄)ことがあります。

痔ろう

歯状線にあるくぼみに大腸菌などが感染すると炎症を起こし、化膿して膿がたまります。この段階を肛門周囲膿瘍と言い、この症状が繰り返されることによって細菌の入り口と膿が皮膚を破って流れ出る部分まで1本のトンネルの様に貫通します。この状態を痔瘻と言います。

原因として下痢やストレスによる免疫力の低下などがあり、肛門括約筋の強い男性にやや多い傾向があります。
症状として肛門の周囲の皮膚が腫れて痛みを伴い、時には熱が出ることもあります。また、痔ろうまで進むと膿が出て下着が汚れます。痔ろうの治療は手術になります。

痔の原因

最大の原因は便通異常、すなわち下痢と便秘です。
体質だからとあきらめるのでなく改善する努力が必要です。

便秘

便秘は痔の大敵です。便がなかなか出にくいために、トイレにいる時間が長くなり、必要以上にいきまなければなりません。
いきむことで肛門周囲の血管に負担をかけ、うっ血して痔核ができたり肛門周囲が切れて裂肛になったりします。また硬い便が肛門の粘膜をこすることで傷がつき、そこから雑菌が入り込んで炎症を起こす原因にもなります。

下痢

下痢も痔の原因になります。特に水の様な水様便や慢性的な下痢は肛門に圧力をかけていることになり、さらに肛門粘膜の炎症を起こしやすくします。その為に痔核や裂肛、さらに痔瘻が起こりやすくなります。

便通異常は正しい生活習慣で治せる場合がほとんどです。食生活や普段の生活、ストレスをためないなど見直してみましょう。

痔の対処法

痔の症状が見られた時に自分でできる対処方法があります。

  • 排便時にひどく出血しても、自然に止まるものがほとんどですが、止まりにくい場合は肛門を圧迫するように10分程度押さえておいてください。
  • 肛門部のうっ血を防ぎ、清潔にするためには、シャワー浴ではなく入浴(湯船につかる)し、お尻を温めると和らぎます。
  • 普段からの生活の改善も必要です。
    便通を整えできるだけ肛門に負担をかけないようにします。
  • お尻の周囲が腫れて痛む時は患部を冷やします。
  • うつぶせの姿勢で患部にタオルを置き、その上から冷やすと痛みがやわらぎます。肛門の周囲から膿が出ているときは排便後、座浴でお尻の周辺を洗いましょう。
  • 市販薬の使用も効果的と思いますが、あくまで症状が軽い場合や病状が分かっている時で、症状がひどくなる前に病院に受診し、専門医に診てもらいましょう。
  • 不規則な生活や疲れ、ストレスなどで再発する可能性も高いので生活習慣を変えないと再発する恐れがあります。

痔になりやすい人

痔は男性に多いと思っていませんか?
実は痔で悩んでいる人の割合が高いのは男女半々なのですが、女性は痔で悩んでいても恥ずかしいという気持ちから病院へ行かなかったりする人が多く、症状を悪化させてしまうことも少なくありません。

女性が便秘になりやすい原因

  • 男性に比べて女性の方は腹筋が弱く、便を押し出す力が弱い
  • 会社や学校、外出先などで恥ずかしいという気持ちから便意を我慢しがちである。
  • ダイエットで食事制限をし過ぎて十分な便が出ない
  • 冷え性のためお尻や腰が冷えやすい。
  • 月経前に分泌される黄体ホルモンが腸の運動を抑制する。

といったことが考えられます。
また、女性は妊娠、出産をきっかけに痔になる人が多いようです。
それは、妊娠中の赤ちゃんの重みによる「うっ血」や出産時の「いきみ」などが原因の多くで、出産後の授乳や育児疲れから便秘やストレスにより痔になる人もいます。

妊娠時、分泌が盛んになる黄体ホルモンという女性ホルモンの1つが腸の動きを抑制し便秘ぎみに、だんだん大きくなる子宮が腸を圧迫し血管循環が悪くなってうっ血が起こり、便秘もしやすくなります。

出産時はいきみの刺激に加え、裂けたり切開した後の縫合によって肛門のしまりが悪くなることがあります。出産後、授乳中、母乳に水分を奪われるため水分不足で便が硬くなり、便秘が起こります。また育児疲れから便秘ぎみになります。

男性が痔ろうになりやすい原因

男性に多いのは痔ろうの主な原因である下痢です。
下痢はストレスやお酒の飲みすぎで起こりやすくなります。一般的に男性は仕事上のストレスや飲酒の機会が多くそれが下痢の原因の一つの要因と考えられます。

痔の予防

痔の最大の原因である便秘や下痢の改善は生活習慣を見直すことで解消することが可能です。

生活習慣

  • 長時間、座りっぱなしや立ちっぱなしという状態をなるべく避けましょう。
  • 時々姿勢を変え、合間も見つけてストレッチなどで体を動かしましょう。
  • 疲れやストレスがたまると免疫力が落ち、痔が悪化しやすくなります。リラックスしてストレス発散しましょう。
  • 適度な運動はストレスの解消に役立つだけでなく、腸の運動を活発にして排便を促す効果があります。
  • 冷えると肛門の筋肉が緊張し、血液の循環が悪くなって痔に悪影響を及ぼします。
  • 毎日入浴して血行をよくし、体や腰回りを冷やさないような工夫をしましょう。また、夏場の冷え性も増えています。クーラーの冷え過ぎにも注意しましょう。

おしりに負担をかけない排泄

  • 間違った排便習慣は痔の原因となります。まず大切なのはお尻に負担をかけない排泄を心がけることです。
  • 便意の我慢を繰り返していると便意を感じなくなり、直腸に長く便がとどまってしまいます。そうなると便の水分が吸収されて硬くなり、排泄の際に肛門に負担をかけます。トイレで長時間いきむのは肛門に負担をかけることになります。
  • 排便後はお尻を優しく拭き、シャワートイレを使い、入浴で肛門をきれいにしておきましょう。

食生活の見直し

  • 便秘を防ぐには食物繊維の多い食品をしっかり摂ることです。
    食物繊維は腸内の水分を吸収して膨らむので、便の量を増やして適度に軟らかくしてくれます。野菜やいも類、豆類、海藻、きのこ類、ドライフルーツ、こんにゃくなどが食物繊維の多い食品です。
  • 朝食を食べましょう。
    腸が活発に動き出し、便意が起こりやすくなります。
    起床直後に冷たい水や牛乳をコップ1杯飲むのも腸の刺激になります。
  • 症状のある時はアルコールや香辛料は避けましょう。
    刺激物は肛門を刺激してうっ血の要因となり症状を悪化させてしまいます。
  • 整腸作用のある乳酸菌や乳糖、オリゴ糖を積極的に摂りましょう。
  • 肛門から出血があり、てっきり痔と思っていたという人が多いかもしれません。ところが、受診して結果大腸がんだったというケースもあります。肛門からの出血という点では痔の症状と一致しますが、大腸がんや潰瘍性大腸炎、大腸ポリープなど他の病気の可能性も考えられます。

気になる症状がある場合は早めに専門医に受診しましょう。
また、健康を維持するためにも定期的に検診を受けましょう。

気になる痛みや症状があったらお気軽にご相談ください

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